糖尿病・内分泌・代謝内科
スタッフ
医長 |
太田 逸朗 |
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概要
当科は2016年に内科より独立し、糖尿病をはじめ内分泌代謝疾患を幅広く診療しております。また当院は、広島県地域保健対策協議会 糖尿病対策協議会において、2018年より糖尿病診療拠点病院の指定を受けております。
なお、糖尿病診療拠点病院とは『糖尿病内科の医師が1~2名常勤し、「糖尿病の医療体制に求められる機能」の多くを備えており、可能な範囲で急性増悪時の治療を担い、合併症治療の多くに対応が可能な病院』とされています。
当科の診療対象
当科では主に内分泌疾患および代謝疾患を担当します。
内分泌疾患としては、ホルモンを分泌する器官である視床下部・下垂体・甲状腺・副甲状腺(上皮小体)・性腺などの内分泌機能異常が挙がります。例えば、ホルモンの過剰(先端巨大症、Basedow病、Plummer病、Cushing症候群など)、ホルモンの不足(下垂体機能低下症、尿崩症、慢性甲状腺炎、副腎皮質機能低下症など)、さらにはこれら内分泌臓器の腫瘍性変化や過形成も診療対象とします。ホルモンの異常が原因となって発症する二次性高血圧症も診療対象となります。
代謝疾患としては、糖代謝異常(1型/ 2型糖尿病などの糖尿病全般、インスリノーマをはじめとした自発性低血糖症や反応性低血糖症など)、脂質代謝異常(通常の高コレステロール血症のみならず、家族性高コレステロール血症などの難治性脂質異常症、原因不明の肥満・るいそう(やせ)など)、核酸代謝異常(高尿酸血症・痛風など)、骨代謝異常(骨粗鬆症、骨軟化症など)を診療対象とします。
なお、いわゆる高血糖緊急症(高浸透圧高血糖症候群、糖尿病性ケトアシドーシス)の方の緊急入院は随時受け入れております。
上記疾患群と関連して、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウムなどの電解質異常についても、内分泌代謝系の異常を背景に発症することが少なくないことから診療対象としています。
血液検査をはじめ放射線検査(単純X線写真、CTスキャン、MRI、RIシンチグラム、骨塩量定量検査(DXA))、超音波検査などの検査を駆使して迅速に診断を進め、治療に結びつけます。外科的治療や放射線治療を必要とする場合は、当院外科・整形外科をはじめ近隣の専門施設と共同して治療に当たります。
連携実績のある専門医療機関(当科から検査あるいは治療を依頼した医療機関)
バセドウ病に対する甲状腺手術:
国立病院機構岩国医療センター 耳鼻咽喉科
あかね会土谷総合病院 甲状腺外科
野口病院(大分県) 外科
バセドウ病に対する放射性ヨード内用療法:
広島市立北部医療センター安佐市民病院 内分泌・糖尿病内科
広島赤十字・原爆病院 内分泌・代謝内科
広島大学病院 内分泌・代謝内科
原発性アルドステロン症に対する選択的副腎静脈サンプリング:
広島大学病院 循環器内科
広島大学病院 内分泌・代謝内科
労働者健康安全機構 横浜労災病院(神奈川県) 糖尿病内科・内分泌内科・代謝内科
下垂体腫瘍:
県立広島病院 脳神経外科・脳血管内治療科
副腎腫瘍:
広島大学病院 泌尿器科
膵内分泌性腫瘍:
広島大学病院 消化器外科
IgG4関連疾患:
広島大学病院 リウマチ・膠原病科
難治甲状腺疾患:
広島大学病院 内分泌・代謝内科
隈病院(兵庫県) 内科
難治骨代謝疾患:
岡山大学病院 総合診療科
当科における独自の糖尿病診療
糖尿病治療中の方で血糖コントロールが不十分または不良の方は糖尿病学習入院をお勧めしております。血糖コントロールが不十分な状態が長期にわたると、糖尿病の三大合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)が不可逆的に進行するだけでなく、膵臓のインスリン分泌能力が次第に損なわれ、その後の血糖コントロールが非常に困難になる場合があります。逆に、早期に治療を開始することにより生涯にわたって安定した病状で過ごすことが可能になります。糖尿病は先手を打って治療を始めることが重要です。
当院の糖尿病学習入院プログラムでは、
➀適切な薬物療法によって血糖コントロールを行うことによりインスリン作用をできる限り回復させて維持し、
➁糖尿病合併症を評価して早期に対処することによりその進行を阻止し、
③当院退院後も長期にわたって適切な糖尿病治療を継続できるための糖尿病療養に関する知識を習得するためのお手伝いをします。
具体的には、糖尿病に関するハイレベルの知識と豊富な経験を備えた多職種集団(医師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師)で構成される糖尿病療養指導チームによって患者さんの生活や価値観に合わせたオーダーメイドの療養指導を行います。先に述べましたように、発症初期の糖尿病療養指導の成否はその後の糖尿病合併症の発症や進展予防に大きい影響を及ぼすことが知られていますが、当施設における糖尿病学習入院を終えた方は退院後もほぼ例外なく良好な血糖コントロールを維持し、新たな合併症を発症することなく過ごしておられます。
当院には糖尿病看護認定看護師、多数の日本糖尿病療養指導士、広島県糖尿病療養指導士が在籍し、入院患者さんの指導に携わっております。このため患者さんは安心して治療や学習に専念できます。
低血糖症状を頻発するいわゆる不安定型糖尿病については、CGM(持続式皮下グルコースモニタリング)にて血糖の変動を把握して適切な治療方針を立て、より安全で有効な薬物療法を検討します。特に若年の1型糖尿病など長期にわたる治療が必要な方、また妊娠出産を控えて厳格な血糖コントロールが必要な方にはインスリンポンプ療法やカーボカウントの導入をお勧めしています。
当科での治療により病状が安定した方は、近隣の医療機関との緊密な連携のもとで治療継続および経過観察を行います。
CGMによる血糖変動分析や管理栄養士による栄養食事指導のみをご希望の方は、かかりつけの先生の紹介状をお持ちいただければ随時承ります。
当科の診療実績
2023年度 患者数 | |
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外来新患 |
126名 |
再診察 |
2,977名 |
入院 |
77名 |
(これまでに当科にて診断と治療を行ったものであり、単に治療を引き継いだものは含みません)
≪内分泌疾患≫
- 下垂体前葉機能低下症
(ACTH単独欠損, TSH分泌不全, ゴナドトロピン分泌不全など) - 先端巨大症
- Cushing病
- 非機能性下垂体腺腫
- Rathke嚢胞
- 下垂体卒中
- 中枢性尿崩症
- 抗利尿ホルモン不適切分泌症候群
- Basedow病
- Plummer病
- Marine-Lenhart症候群
- 慢性甲状腺炎
- 腺腫様甲状腺腫
- 無痛性甲状腺炎
- 亜急性甲状腺炎
- 甲状腺濾胞腺腫
- 甲状腺乳頭がん
- 先天性甲状腺欠損症
- 異所性甲状腺
- 薬剤性甲状腺機能障害(アミオダロン, 炭酸リチウム)
- 放射性ヨード内用療法後甲状腺機能低下症
- 甲状腺全摘後甲状腺機能低下症
- 甲状腺全摘後副甲状腺機能低下症
- (副腎性)Cushing症候群
- 周期性Cushing症候群
- 原発性アルドステロン症
- (原発性・下垂体性・視床下部性)副腎皮質機能低下症
- 副腎非機能性腫瘍(非機能性腺腫、骨髄脂肪腫など)
- 褐色細胞腫
- 傍神経節細胞腫(パラガングリオーマ)
- 加齢性男性性腺機能低下症(LOH症候群)
- 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)
下垂体機能低下症(ICI関連下垂体炎)
副腎皮質機能低下症
甲状腺機能異常症(ICI関連甲状腺炎)
など
≪代謝疾患≫
- 1型糖尿病 (1型糖尿病合併妊娠を含む)
- 2型糖尿病 (2型糖尿病合併妊娠を含む)
- 肝性糖尿病
- 膵性糖尿病
- ステロイド糖尿病
- 糖尿病ケトアシドーシス(DKA)
- 高浸透圧高血糖症候群(HHS)
- 妊娠糖尿病
- インスリノーマ
- 反応性低血糖
- 脂質異常症
- 高尿酸血症
- 病的肥満症
- るいそう(薬剤性慢性嘔吐下痢症)
- 妊娠糖尿病
- 原発性骨粗鬆症
- ステロイド骨粗鬆症
- FGF23関連低リン血症性骨軟化症
など
≪その他≫
- Gitelman症候群
- 偽性Cushing症候群(アルコール多飲)
- 水中毒(心因性多飲症)
- 塩類喪失性腎症
- ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症(MRHE)
- 漢方エキス製剤による偽性アルドステロン症